アウトブレイクカンパニー
面白い。
少しオタク文化を賛美し過ぎるあたりが
”クールジャパン”を思い起こさせ、少し恥ずかしくもあるが。
こういった社会の経済活動を書いたファンタジーは
「狼と香辛料」や「まおゆう魔王と勇者様」といった作品があげられる。
そういった中で、この作品の独自性は
オタク文化という、コンテンツの輸出について書いた点か。
突っ込みどころは多いが
まおゆう(アニメ版)のように
と散らかって、終わるという様な事がなてくよかった。
バランスを、コンテンツの輸出の方へ、しっかりと振っているのが成功の要因。
仕掛けがうまい、昔からある、先進諸国の人間が文化的に未熟な地にいって
人間的な生活を教えて差し上げる(かなり上から目線だが)といった
よくある物語の形をラノベに持ち込んだものだろう。
主人公の慎一は、他の作品と違わず、女の子を危険から救ったりはしているが
それだけだと薄っぺらく、他の作品との差違を生み出せない。
そこで、アニメに関する知識を有することや、日本語が使えるという
視聴者の多数に、当てはまる設定(つまり、感情移入もしやすい)の慎一を、
エルダント帝国という未開の地へ放り込む事によって、特別な存在へと変える
さらに、それによって女の子から、尊敬と思慕の情を集めるという、
ラノベの基本形、お約束を、簡潔に作り上げる事に、成功している。
(ある意味勝てる所で勝負するという、ビジネスへの示唆にも思えるが。勘ぐり過ぎ?)
唯一の疑問は、文化的な男は持てそうだけど、それがオタク文化でもなのか?という事だ。
いくら、見たことのないコンテンツでも、目がデカ過ぎる女の子が、イチャイチャしてたり、
見た目にいまいちパッとしない、TVゲームといった趣味を、理解してくれる女の子が多いとは思えないのだが。
学校でも、みんな理解力あり過ぎだし。
(だからファンタジーなんだ、と言われてしまえば終わりなのだけど。)
そこを文化の違いとして、物語をさらに膨らましてくれれば面白くなると思うう。
他に気になる所は、エルダント帝国の社会的状況について描かれていない事だ。
誰かが、エルダントには、娯楽が少ない、という様な事を言ってた気がするけれど、何故なのか。
戦争、資源、土地などなど様々な要因が考えられるが
普通は居・食・住が整っていれば、娯楽は発達するだろう。
社会的状況と娯楽(文化)は密接に関係している。
なので、オタク文化の輸出や、それによる摩擦をかくんだったら
そこは不可欠なんじゃないかなーと思った。
例えば、文化的侵略は、アメリカとか、キリスト教がうまいけど、
それには、コンテンツの強さだけではなく、きちんとした戦略があったりする。
戦争で滅茶苦茶になった国に、娯楽を輸出することによって、それを浸透させたり
貧乏な国に食料と教育を提供しつつ、そこに自分たちの思想を忍び込ませたりなど。
そして、今は、多国籍企業がそれに変わっている、小さな頃から慣れ親しませる、マックのハッピーセット何かが代表かもね。
ただ、そこを詳しく書いてしまうと、エルダント帝国に対しては
オタク文化なんかより、もっと主力になりそうな輸出商品が
日本にはあるような気がしてしまうのだけれど。
話は戻るが、慎一は、日本の社会に帰ってくれば、ただの引きこもりのオタクにすぎず
もっとアニメに詳しい人や、社交性のあるオタクも沢山いるはずだ。
そこの所は局長の的場さんに言わせてるので、原作のほうでは、恐らく主人公が人としての深み(成長)を獲得していく事になるのであろう。
なんにせよ、冒頭での商業アニメの一つの型(お約束)を作る煩わしさを省略できた為、限られた話数の中で、他の部分に力を割り振ることができた。
その設定のうまさが光る作品かと。