幻想と灰のグリムガル(ネタバレ)
逃避はアニメに重要な要素だと思う。
水彩画、印象派っぽい背景には光が溢れる。
モノローグの多用と時折現れる淡い画風が酔いをもたらす。
感情や死、生活がゆっくりと丁寧に描かれる。
一人の死をこんなに長くやるのもあまり見たことがない。
感情面にフォーカスした作り。
無音の使い方が印象的。
濃密な人間関係や時間、街の匂いと人々の生活、生きる為に殺す事、風景や焚き火、虫や鳥の声、雪の無音などが生を体感させる。
親しい人間の死がカオスを表す。
生き物を殺して金を稼ぎ、酒場で酒を飲む。
社会がある程度の柔軟性、闇を残しているということ。
時代がそれを許容する。
国が存在しない時代、極めて限定的な人間関係が残り、明確なシステムがない時代。
自由であるが人間が容易に死ぬ時代。
何処か牧歌的なのは、身内以外の人間(他人)を殺すことがモンスターで隠されているから。
それは、差別や排斥も許容される世界であるということ。
現代に、カオスは許容されない。
死は巧妙に隠され、万人に優しく、正しい事だけが許される。
テクノロジーは、個人の力を制御できぬ程に暴走させ、限定的な人間関係を死滅させた。
自由は永久に失われ、理想(幻想)も潰える。
誰もが幼き頃に抱いた狂気は、歪められて社会に破壊を産み出した。